ウンディーネ
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ウンディーネ (独: Undine)は、四大精霊のうち、水を司る精霊(elementals)である。語源は羅: unda(「波」の意)である。他言語では、仏:Ondine(オンディーヌ)、英:Undine(アンダインまたはアンディーン)、伊:Ondina(オンディーナ)。
湖や泉などに住んでおり、性別はないが、ほとんどの場合美しい女性の姿をしているとされ、人間との悲恋物語が多く伝えられている[1]。
パラケルススによると、ウンディーネには本来魂がないが、人間の男性と結婚すると魂を得る。しかしこれには大きな禁忌がつきまとう。
- ウンディーネは水のそばで夫に罵倒されると、水に帰ってしまう。
- 夫が不倫した場合、ウンディーネは夫を殺さねばならない。
- 水に帰ったウンディーネは魂を失う。
ウンディーネを題材にした作品
フーケの『ウンディーネ』
ドイツの作家フリードリヒ・フーケは、1811年、美しき水の精霊ウンディーネと騎士フルトブラントの悲恋を主題とする中編小説『ウンディーネ』を出版した[2][3][4][5]。
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテも「ドイツの真珠」と絶賛したドイツロマン主義小説の名作であり、たちまち数ヶ国語に翻訳された。この作品は、多くの派生作品を生んだ。
ジロドゥの『オンディーヌ』
フランスの戯曲家ジャン・ジロドゥは、1939年、フーケの『ウンディーネ』を原作とする戯曲『オンディーヌ』を書いた[6]。
オンディーヌは美しい水の精であったが、騎士ハンスと恋に落ちて人間界へとやってくる。しかし、オンディーヌの天衣無縫のふるまいに嫌気がさしたハンスは、かつての許婚ベルタに心を移してしまう。ところが、オンディーヌが人間界に遣わされるにあたっては水界の王との間に、もしハンスがオンディーヌを裏切った時は、ハンスの命を奪ってもよいという契約が交わされていたのだ。ハンスを死なせないためにオンディーヌは色々試行錯誤するが、結果失敗に終わり、ハンスは命を落とす。
バレエ
2作が作られ、いずれもフーケの『ウンディーネ』を原作としている。
1843年、ジュール・ペロー振り付け、チェーザレ・プーニ作曲で、『オンディーヌ、またはナイアド』が作られた。
1958年、フレデリック・アシュトン振り付け、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ作曲で、『オンディーヌ』が作られた。この作品は英国ロイヤル・バレエ団のレパートリーとして度々上演されている。初演はマーゴ・フォンテインがタイトル・ロールを踊った。吉田都の当たり役のひとつでもある。
オペラ
- E.T.A.ホフマン『ウンディーネ』 1814年。フーケの『ウンディーネ』が原作。
- アルベルト・ロルツィング『ウンディーネ』 1845年。フーケの『ウンディーネ』が原作。
- アレクセイ・リヴォフ『ウンディーナ』 1846年。
- ピョートル・チャイコフスキー『ウンディーナ』 1869年。フーケの『ウンディーネ』が原作(ヴァシーリー・ジュコーフスキー訳)。
ウンディーネではないが似た主題を持つ作品として、アントニン・ドヴォルザークのオペラ『ルサルカ』がある。
音楽劇以外の音楽
- カール・ライネッケ作曲の室内楽曲「フルートソナタ ホ長調 Op.167 ウンディーネ」。
- モーリス・ラヴェル作曲のピアノ組曲『夜のガスパール』の第1曲「オンディーヌ」。
- クロード・ドビュッシー作曲の『前奏曲集』第2巻の第8曲「オンディーヌ」。
- 長山洋子の1987年のアルバム『オンディーヌ』。第1曲は「真夜中のオンディーヌ」。
- 福嶋尚哉作曲の東京メトロ銀座線渋谷駅2番線の発車メロディ「アンディーン」。
映画
- 『オンディーヌ 海辺の恋人』(2009年、アイルランド、ニール・ジョーダン監督、コリン・ファレル主演)[7]
- 『水を抱く女』(2020年、ドイツ、クリスティアン・ペツォールト監督、パウラ・ベーア主演)[8]
その他の文学
- 児島冬樹の小説『夢幻界 オンディーヌ』(角川書店、1987年)
脚注
注釈
出典
- ^ 『モンスター・コレクション 改訂版 上』1996年、98-104頁
- ^ 『岩波文庫 水妖記 ウンディーネ』岩波書店, 1978年, ISBN 978-4003241516
- ^ 『ドイツ・ロマン派全集5 フケー/シャミッソー』国書刊行会, 1983年, ISBN 978-4336026835
- ^ 『ウンディーネ』新書館, 1995年, ISBN 978-4403031076
- ^ 『ウンディーネ』 武居忠通 訳 東洋文化社 メルヘン文庫, 1980年, ISBN 4-88599-054-8
- ^ 『オンディーヌ』 ジロドゥ戯曲全集 第5巻 白水社, 1958年(2001年7月復刊, ISBN 978-4560035450)
- ^ フィリップ・ヴァルテール『ユーラシアの女性神話-ユーラシア神話試論Ⅱ』(渡邉浩司・渡邉裕美子訳)中央大学出版部 2021年、ISBN 978-4-8057-5183-1、93頁、注18)
- ^ 入倉功一 (2020年12月24日). “現代の水の精・ウンディーネ神話『水を抱く女』日本公開決定”. シネマトゥデイ. https://www.cinematoday.jp/news/N0120715 2022年2月5日閲覧。
参考文献
- 安田均 / グループSNE『モンスター・コレクション 改訂版 上』富士見ドラゴンブック、1996年 ISBN 4-8291-4310-X
関連項目
- ヴォジャノーイ、ルサールカ - ウンディーネと同じく水の精である。
- ウンディナ (小惑星)
- 四大精霊
- サラマンダー (妖精)
- シルフ
- ノーム (妖精)
- 先天性中枢性肺胞低換気症候群 - 別名「オンディーヌの呪い」と呼ばれる。