サステナブルファッション

サステナブルファッション: Sustainable fashion)とは、衣服生産から着用、 廃棄に至るプロセスにおいて将来にわたり持続可能であることを目指し、 生態系を含む地球環境や関わる人・社会に配慮した取り組みのこと[1]

2020年、大企業による繊維製造業のサプライチェーンにおける環境負荷低減のための自主的な自己改革は、ほとんど成功していないことが明らかになった[2][3]。グリーンウォッシングを超えるアパレル改革策には、標準化された認証を作成し実施する政策、適切な輸入規制、補助金、エコタリフのような介入が必要である[4]

Statistaによると、世界のサステナブル・ファッション市場は2025年までに98.1億ドルに達すると予測されている[5]

ファッションが環境に与える影響は、衣服の使用量や使用期間にも左右される[6][7]。ファストファッションの流行により、衣料品は15年前の半分しか使われない傾向にある。毎年約1億7200万ドル相当の衣類が捨てられていると推定されているが、その多くは一度しか着ていない。1975年から2018年まで、世界の一人当たりの繊維生産量は7.1kg増加した[8]。一般的に、長年にわたって毎日使用される衣服は、一度使用してすぐに廃棄される衣服よりも影響が少ない。

概説

大量生産大量消費・大量廃棄からの脱却と環境負荷を考慮した持続可能なファッション産業の実現が課題になっている。

環境負荷

日本国内で一年間に供給される衣服は約35億着で、原材料調達から製造段階[注釈 1]までに9,500万トンの二酸化炭素排出されている[10][注釈 2]。一着の衣服を生産するのに排出される二酸化炭素は約27kgであり、500mlのペットボトル約255本製造分に相当する。また、原材料となる綿栽培などに使われるの消費量は83億立方メートルで、一着当たり約2,300Lであり、浴槽11杯分相当と推計されている[10]。 そのため、ファッション産業は、人間の活動によって排出される二酸化炭素量の10%を排出し、2番目に水を多く消費する産業である[11]

大量生産・大量消費・大量廃棄

日本国内における衣服の供給数は増加する一方で、一着あたりの価格は年々安くなり、市場規模は縮小している[9]。よって、大量生産、大量消費が拡大し、衣服の購入から廃棄までの短期化による大量廃棄の流れが起きており、一人あたり年間約18枚を購入し、一回も着用されない衣服が25枚ある[9]。手放される衣服の65%に当たる51万トンが廃棄され、古着などのリユースリサイクルは計35%にとどまる[10]

取り組み

持続可能な原材料

オーガニックコットンやリサイクルデニム、リサイクルポリエステル植物由来染料などの環境に配慮した持続可能性に優れる原材料を採用する[9]

繊維材料のリサイクル

単一材料ではない混紡繊維の衣類はその繊維材料ごとの分離が困難なためリサイクルが容易ではないが、2024年大阪大は綿とポリエステルの混紡衣料をマイクロ波処理することでそれぞれの繊維材料を分離する技術を開発した[12][13]。5年後ころの実用化を目指すとしている[14]

環境省の資料

  • 丁寧な服作りによる衣類ライフサイクルの長寿化に向けた取組事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • リペアを通じて顧客接点を拡大した新たな価値作りの取組事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • 海洋環境への影響が懸念されるマイクロプラスチックの排出削減の取組事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • 消費を制限させつつ服との新たな出会いを誘発させるシェアリングサービスの取り組み事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • デッドストック品を活用した展示・販売の取組事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • サステナブルファッションの認知度向上に向けた取組事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • 適正在庫とアップサイクルによる大量廃棄問題の解決に向けた取組事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • セールを前提とした商品企画を行わず商品サイクルの長期化に取り組む事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • Higg Indexを活用したサステナビリティに関するサプライチェーンの透明性を向上させる取り組み事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • オーガニックコットンに関する取組事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • ペットボトルを原料とした繊維素材への再生利用の取組事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • カーボンフットプリントを表示した製品販売の取組事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • デニム裁断屑を再利用したアップサイクルへの取組事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • 自治体と連携した古着回収&リサイクルの取組事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • 服から服をつくる衣類のサーキュラー・エコノミーへの取組事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • 繊維くずや使用済み衣料から新しい衣料を製造する取組事例(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ

開発

ファッションにおける無駄のないデザインとは、繊維や衣服の生産工程における材料の無駄を削減することを目的とした概念である[15][16]。このコンセプトは数年前からある。無駄のないパターンメイキング:パターンを切り取る際に生地を無駄にしないよう、衣服のパターンを作成する。伝統的な水による染色に代わる方法を用いるのも一つの方法である。このプロセスには、ドライダイ(Drydye)、コロドライ(Colordry)という別名がある[17][18]

脚注

注釈

  1. ^ 製造段階とは、紡績染色裁断裁縫輸送を指す[9]
  2. ^ 衣服の98%は海外から輸入されており、9,500万トンのうち9割は海外で排出されている[10]

出典

  1. ^ “環境省サステナブルファッションのページへようこそ!これからのファッションのあり方を持続可能なものにアップデートする為の情報を紹介しています。”. 環境省_サステナブルファッション. 環境省. 2021年4月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月14日閲覧。
  2. ^ “Destination Zero: seven years of Detoxing the clothing industry”. storage.googleapis.com. 2024年8月15日閲覧。
  3. ^ “Greenpeace Calls Out Nike, Adidas and Puma for Toxic Clothing”. www.reuters.com. 2024年8月15日閲覧。
  4. ^ “Voluntary fashion initiatives and certifications “enable” greenwashing”. www.just-style.com. 2024年8月15日閲覧。
  5. ^ “Start with How To: Launch Sustainable Fashion Brand”. finmodelslab.com. 2024年8月15日閲覧。
  6. ^ “Textile Waste in the Fashion Industry”. theprettyplaneteer.com. 2024年8月15日閲覧。
  7. ^ “Fast Fashion and Its Environmental Impact”. earth.org. 2024年8月15日閲覧。
  8. ^ “The environmental price of fast fashion”. aaltodoc.aalto.fi. 2024年8月15日閲覧。
  9. ^ a b c d “自分にも環境にも優しい「サステナブルファッション」を取り入れて、心地よいおうち時間を過ごしませんか?”. COOL CHOICE. 環境省 (2021年7月28日). 2021年7月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月14日閲覧。
  10. ^ a b c d “「ファッションロス」調査、衣服製造から廃棄の工程で年9500万トンのCO2排出”. 読売新聞オンライン. 読売新聞東京本社 (2021年4月17日). 2021年4月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月14日閲覧。
  11. ^ “大量の水の使用、そして85%はゴミに…ファッション業界は環境へ大きな影響を与えている”. ビジネスインサイダージャパン. 株式会社メディアジーン (2019年10月22日). 2019年10月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月14日閲覧。
  12. ^ “\アパレル界のリサイクルに革命を!/ 混紡繊維を分別・リサイクルする新技術”. ResOU. 2024年7月15日閲覧。
  13. ^ “大阪大学、混紡繊維をマイクロ波で分別しリサイクルする技術を開発 | Circular Economy Hub - サーキュラーエコノミー(循環経済)メディア” (2024年4月7日). 2024年7月15日閲覧。
  14. ^ ““チンして”繊維取り出し 衣類リサイクルの促進期待(共同通信)”. Yahoo!ニュース. 2024年7月15日閲覧。
  15. ^ “Zero Waste Fashion Really Is The Future: Here’s Why”. sustainablereview.com. 2024年8月15日閲覧。
  16. ^ “Zero Waste Fashion Concepts: Why Consumer Choices Matter”. puratium.com. 2024年8月15日閲覧。
  17. ^ “Staining”. biologyreader.com. 2024年8月15日閲覧。
  18. ^ “Types of Staining Techniques Used in Microbiology”. microbeonline.com. 2024年8月15日閲覧。

関連項目

外部リンク

  • サステナブルファッションの推進に関するWebサイト - 環境省インターネットアーカイブ
  • 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務_調査結果概要(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ
  • 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務_消費者アンケートまとめ(PDF) - 環境省インターネットアーカイブ