シンチン

シンチン

1′-Methyl-1,1′:2′,1′′-tercyclopropane

別称
1-Methyl-1,2-dicyclopropylcyclopropane; Sintin; Synthin; Tsycklin
識別情報
CAS登録番号 93223-46-2 チェック
PubChem 519050
ChemSpider 452765 ×
  • CC1(C2CC2)C(C3CC3)C1
  • InChI=1S/C10H16/c1-10(8-4-5-8)6-9(10)7-2-3-7/h7-9H,2-6H2,1H3 ×
    Key: GTKAAVZEFUFXDD-UHFFFAOYSA-N ×
  • InChI=1/C10H16/c1-10(8-4-5-8)6-9(10)7-2-3-7/h7-9H,2-6H2,1H3
    Key: GTKAAVZEFUFXDD-UHFFFAOYAR
特性
化学式 C10H16
モル質量 136.23 g mol−1
密度 0.851 g/mL
沸点

158 °C, 431 K, 316 °F

特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

シンチン(Syntin)は、分子式 C10H16炭化水素で、ロケット燃料として使用された。

立体異性体

シンチンは分子の中央に位置するシクロプロパン環に2つのキラル中心が存在し、以下の立体異性体を持つ。

4種類のシンチン立体異性体
4種類のシンチン立体異性体

ロケット燃料としての物性

上記のようにシンチンには複数の立体異性体が存在するものの、ロケット燃料としては分離することなく混合物のまま使用される。沸点は158 °Cである。 分子内に歪んだシクロプロパン環を3つ持つことに起因して、生成熱は ΔfH°(l)=133kJ/mol (980kJ/kg、異性体混合物の平均)と大きく、燃焼時の発生エネルギーが大きい。そのため、RP-1などの炭化水素系燃料と比較して燃焼熱が多いという利点がある。また、密度は0.851 g/mLと炭化水素系燃料と比較して高密度である上に、粘度が低いという特性も持つ。

歴史

シンチンはソビエト連邦およびロシアにおいて、1980年代から1990年代にかけてソユーズU2ロケットの燃料として使われた。ソビエト連邦では1960年代に初めて合成され、1970年代に大量生産されるようになった。5-ヒドロキシペンタナールから多段階の反応を経て合成される。

シンチン合成フロー
シンチン合成フロー

しかし、ソビエト連邦の崩壊後、シンチンは製造コストが高価なことから生産中止となった。

関連項目

参考文献

  • A. P. Mesheheryakov, V. G. Glukhovtsev, A. D. Petrov, “Synthesis of 1-methyl-1,2-dicyclopropylcyclopropane”, Doklady Akademii Nauk SSSR, 1960, 130, 779-81.
  • Yu. P. Semenov, B. A. Sokolov, S. P. Chernykh, A. A. Grigor'ev, O. M. Nefedov, N. N. Istomin, G. M. Shirshov, “Multiple strained-ring alkane as high-performance liquid rocket fuel”, RU 2233385, C2 20040727.
  • T. Edwards, “Liquid Fuels and Propellants for Aerospace Propulsion: 1903-2003”, Journal of Propulsion and Power, 2003, 19(6), 1089-1107.
  • V. Azov, D. Vorontsov, "The last battle of hydrocarbons?", Novosti Kosmonavtiki, 2008, 18, No. 2 (301), 44-46.