フェランチ効果

フェランチ効果(フェランチこうか、英語: Ferranti effect)は、その発見者のセバスチャン・フェランティにちなんで名づけられた、大きな容量を持つ高圧送電線や送電ケーブルの受電側で急に負荷を切り離したり、使われていなかった線に負荷を繋いだりしたときに発生する現象である。フェランティは、1890年にデプトフォード発電所を建設するに際して負荷を切り離したり繋いだりする機能試験を行っていて、送電線の電圧が上昇するのを発見した。

現象

380 kV 送電線
50 Hz送電
L(インダクタンス) = 1,01 mH/km
C(キャパシタンス) = 11,48 nF/km

送電線長さ 電圧上昇率
100 km 0.6 %
200 km 2.3 %
300 km 5.4 %
400 km 9.9 %

フェランチ効果では、送電線や送電ケーブルのキャパシタンスに応じて流れる充電電流[1]力率改善の為の進相コンデンサの影響により[2]電圧上昇が発生する。結果として、送電線の受電端の電圧UEは、以下の式にしたがって送電端の電圧USより大きくなる。

U E U S = ( 1 + 1 2 R + X L X C ) 1 {\displaystyle {\frac {U_{E}}{U_{S}}}=\left(1+{\frac {1}{2}}{\frac {R+X_{L}}{X_{C}}}\right)^{-1}}

電圧上昇の程度は、送電線や送電ケーブルの長さが長いほど大きく、そのキャパシタンスXCが大きいほど大きい。一方インダクタンスXLは電圧上昇を低減する方向に働く。また、負荷の無かった送電線に負荷をつないだ際には、これに加えて電源投入時の過渡現象も発生する。同時に一相地絡故障が発生するとさらに電圧が上昇して絶縁破壊を起こすことがある。

フェランチ効果の軽減のために、分路リアクトルが用いられる。分路リアクトルは回路に必要に応じて接続され、電圧上昇を軽減するように送電線のインダクタンスを増やす働きをする。コイルのリアクタンスを選択することにより電圧上昇の程度を制御することができる。また送電端と受電端にリアクトルを接続することでフェランチ効果の軽減だけではなく、軽負荷時のキャパシタンス充電電流の補償も行うことができる。これに加えて、送電線の送電端と受電端で同時に電路を切り離す同調回路が使用される。

脚注

  1. ^ 川本昂, 長谷川丈, 鈴木福太郎, 斉藤清吉「電力系統におけるフェランチ効果について」『福井大学工学部研究報告』第25巻第1号、福井大学工学部、1977年3月、21-35頁、CRID 1050282812765618560、ISSN 04298373。 
  2. ^ 比江島大輝, 甲斐貴大, 林則行「高圧配電線路におけるフェランチ効果と逆潮流による電圧変動に関する研究」『宮崎大学工学部紀要』第46巻、宮崎大学工学部、2017年7月、191-196頁、CRID 1050570264722378624、hdl:10458/6078ISSN 05404924。 

参考文献

  • H. Koettnitz, G. Winkler, K. Weßnigk: Grundlagen elektrischer Betriebsvorgänge in Elektroenergiesystemen. VEB Deutscher Verlag für Grundstoffindustrie Leipzig. ISBN 9783342000877.

外部リンク

  • 電力系統の電圧・無効電力制御
  • フェランチ効果とは?原理を分かりやすく解説【進み力率で起こる】2023年12月12日 電験Tips