一切如来心秘密全身舎利宝筺印陀羅尼経
一切如来心秘密全身舎利宝篋印陀羅尼経(いっさいにょらいしんひみつぜんしんしゃりほうきょういんだらにきょう、以下本ページでは宝篋印陀羅尼経と略称す)は中国の唐代に三蔵法師の不空によって漢訳された、密教由来の経典。この経典の中の陀羅尼は宝篋印陀羅尼(正式には一切如来心秘密全身舎利宝篋印陀羅尼)と呼ばれ、造仏、造塔時にその中へ写経されたものが納経されたりする。
少なくとも類似の異本が合わせて三編伝えられている[1]。わが国で広く流布する(大正蔵B 1928, p. 712 - 715)の祖本である金剛寿院本は偽経であるとする異説がある[2]。
釈迦が供養した直後に朽ち果てた仏塔が突如眩しく光りだして、地中から彼を褒め称える大音声がしたという説話の部分は、法華経見宝塔品第十一のものに似る[3]。
この経を写経すれば現世利益があるとされ[4]、宝篋印塔に納経される。
加持
土の中から声がした時、微笑しつつ流涙しながら釈迦がその廃塔の周りを右回りに三回回って礼拝したと経は記す[5]。
これに因んで、宝篋印塔の周りを右回りに回って礼拝すれば、その功徳により特別な加持があると経は説く。すなわち阿鼻地獄に堕ちて塔を一礼拝あるいは一右遶すれば地獄門は塞がり菩提路が開く[6]、あるいは幸福を求めて塔に一華一香礼拝供養し右旋行すると、この功徳により一切の願いがかなうとされる[7]。
脚注または引用文献
関連項目
参考文献
(主に年代順に)
ウェブサイト
- 中野隆行. “宝篋印陀羅尼経研究”. 2023年10月24日閲覧。
書籍
- 不空 (1928-10). “一切如來心祕密全身舎利寶篋印陀羅尼経(No.1022A)”. In 高楠順次郎. 大正新脩大蔵経. 19. 大正新脩大蔵経刊行委員会. p. 710-712. https://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/ddb-sat2.php?mode=detail&useid=1022A,19,0710a09&key=No.1022A&ktn=&mode2=2
- 不空 (1928-10). “一切如來心祕密前進舎利寶篋印陀羅尼経(No.1022B)”. In 高楠順次郎. 大正新脩大蔵経. 19. 大正新脩大蔵経刊行委員会. p. 712-715. https://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/ddb-sat2.php?mode=detail&useid=1022B,19,0712&key=No.1022B&ktn=&mode2=2
- 島谷弘之 著「金剛寺本「宝篋印陀羅尼経」の意義―消息経流行の一例として―」、古筆学研究所 編『古筆と国文学』 1巻、(株)八木書店、東京都千代田区神田小川町〈古筆学叢林〉、1987(昭和62)-10、187頁。ISBN 4-8406-9401-X。「「この経典を書写すれば、罪障を滅し三途の苦を脱して寿命増長する功徳が得られる」と説く」
- 大法輪編集部 編『真言・梵字の基礎知識』大法輪閣、1993(平成05)-06。ISBN 4-8046-1106-1。
- 苫米地, 誠一 (1998(平成10)-08-20). “1022 A・B 一切如来心秘密全身舎利宝篋印陀羅尼経”. 大蔵経全解説大辞典. 東京都千代田区富士見: 雄山閣出版(株). p. 298. ISBN 4-639-01536-4
- 中野隆行『宝篋印陀羅尼経広本の日本成立に関する一試論:平安末期台密所伝の諸本の分析』私家版、2006(平成18)-10-21。
- 大法輪閣編集部 編「一切如来心秘密全身舎利宝筐印陀羅尼」『真言・陀羅尼・梵字―その基礎と実践』(初版)大法輪閣、2020(令和2)-02-10、153 - 156頁。ISBN 978-4-8046-1422-9。「宝筐印陀羅尼と略称される。この陀羅尼を説くものに唐の不空三蔵が訳した『一切如来心秘密全身舎利宝筐院陀羅尼経』がある他、異訳として宋の施護三蔵が訳したものがある。真言宗では不空訳に説かれる陀羅尼を用いてきたが、不空訳にも明本と長谷版(享和元年)があって、長谷版を和本と称して、これが広く用いられてきた。」
雑誌
- 日本歴史 (吉川弘文館) (831 (2017年8月)). (2017)、この号の巻頭口絵写真に一例が掲載されている。
外部リンク
- “一切如来心秘密全身舎利宝篋印陀羅尼経”, 人文学オープンデータ共同利用センター, doi:10.20730/200015134, http://codh.rois.ac.jp/pmjt/book/200015134/ 2023年9月14日閲覧。
- 矢切の石塔:日本廻国六十六部供養塔, https://www.asahi-net.or.jp/~cb9s-jyuk/kaikokutou/kaikoku.htm 2023年10月24日閲覧。
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