毛皮を着た紳士の肖像

『毛皮を着た紳士の肖像』
イタリア語: Ritratto di gentiluomo in pelliccia
英語: Portrait of a Gentleman in a Fur
作者パオロ・ヴェロネーゼ
製作年1550年–1560年ごろ
種類油彩キャンバス
寸法140 cm × 107 cm (55 in × 42 in)
所蔵パラティーナ美術館フィレンツェ
ヴェロネーゼの『ダニエレ・バルバロの肖像』。アムステルダム国立美術館所蔵。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオの『ダニエレ・バルバロの肖像』。プラド美術館所蔵。

毛皮を着た紳士の肖像』(けがわをきたしんしのしょうぞう、: Ritratto di gentiluomo in pelliccia, : Portrait of a Gentleman in a Fur)は、イタリアルネサンス期のヴェネツィア派の画家パオロ・ヴェロネーゼが1550年から1560年ごろに制作した肖像画である。油彩。毛皮の上着を着た紳士を描いた作品で、かつてはヴェネツィア聖職者建築家人文主義者ダニエレ・バルバロ(英語版)の肖像画と考えられていたが、今日の研究者の見解は否定的である。枢機卿レオポルド・デ・メディチによって収集されたメディチ家のヴェネツィア派絵画の1つ。現在はフィレンツェパラティーナ美術館に所蔵されている[1][2][3][4][5]

作品

ヴェロネーゼは暗い部屋にいる紳士を膝丈で描いている。男性はユキヒョウ[4]、あるいはオオヤマネコ毛皮で裏打ちされた黒いマントを着ており[5]、灰色の長い髭を生やしている。男性は左手で白いハンカチを握りしめ、右手でマントの裏地の毛皮をつかんでいる。背景の暗い部屋は、壁、溝のある古典的な石柱、窓によって形成されている。肖像画はティツィアーノ・ヴェチェッリオの影響を強く受けたヴェロネーゼの成熟した作品であり、その高い品質が評価されている[6]

描かれた人物については不明である。肖像画はダニエレ・バルバロを描いた作品と考えられていたが、美術史家テリージョ・ピニャッティ(イタリア語版)によると、アムステルダム国立美術館所蔵のヴェロネーゼの『ダニエレ・バルバロの肖像』(Ritratto di Daniele Barbaro)と比較からダニエレ・バルバロと同一視することは困難である[2]

肖像画の正確な制作年代は不明である。研究者の間で一致した見解はなく、1549年から1570年の広範囲にわたっている[2]

来歴

肖像画は1659年にトスカーナ大公コジモ2世・デ・メディチの息子で、ヴェネツィア派絵画の愛好家であった枢機卿レオポルド・デ・メディチによって購入されたことで、メディチ家のコレクションに加わった。レオポルド枢機卿はヴェネツィアの代理人パオロ・デル・セーラ(英語版)を介して絵画を収集しており、購入価格は200ドゥカートであった[4]

影響

18世紀に画家フランチェスコ・ペトルッチ(Francesco Petrucci)の原画に基づき、オランダ出身の画家・版画家・美術商のテオドール・ウェルクライス(Theodor Vercruys)によってエングレーヴィングが制作された[2][3][6]。これは彼らがメディチ家が所有したティツィアーノの作品を中心とする男性の肖像画に基づいて制作した6点の版画の1つである[6]。他の5点はティツィアーノの『イッポリト・デ・メディチの肖像』(Ritratto di Ippolito de' Medici)、『ペトルス・アレティヌスの肖像』(Ritratto di Petrus Aretinus)、『男の肖像』(Ritratto d'uomo)、『アンドレア・ヴェサリオの肖像』(Ritratto di Andrea Vesalio)、アンソニー・ヴァン・ダイクの『男の肖像』(Ritratto d'uomo)である[7]

ギャラリー

毛皮をまとった他のヴェロネーゼの肖像画

脚注

  1. ^ 『西洋絵画作品名辞典』p.70。
  2. ^ a b c d “ritratto d'uomo”. ウフィツィ美術館公式サイト. 2023年12月15日閲覧。
  3. ^ a b “ritratto d'uomo”. イタリア文化財総合目録公式サイト. 2023年12月15日閲覧。
  4. ^ a b c “Veronese”. Cavallini to Veronese. 2023年12月15日閲覧。
  5. ^ a b “Gentleman in a Lynx Fur”. Web Gallery of Art. 2023年12月15日閲覧。
  6. ^ a b c “ritratto di gentiluomo in pelliccia. ritratto d'uomo. Verkruys Theodor, Petrucci Francesco, Caliari Paolo Detto Paolo Veronese”. イタリア文化財総合目録公式サイト. 2023年12月15日閲覧。
  7. ^ “Verkruys Theodor (notizie 1707-1726/ 1739)”. イタリア文化財総合目録公式サイト. 2023年12月15日閲覧。
  8. ^ “Férfiképmás”. ブダペスト国立西洋美術館公式サイト. 2023年12月15日閲覧。
  9. ^ “Bildnis des Admirals Girolamo Contarini (1521-1577)”. ドレスデン美術館オンラインコレクション公式サイト. 2023年12月15日閲覧。

参考文献

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、毛皮を着た紳士の肖像に関連するカテゴリがあります。
  • ウフィツィ美術館公式サイト, パオロ・ヴェロネーゼとして知られるカリアリ・パオロ『男の肖像』
宗教画
  • 『聖カタリナの神秘の結婚(国立西洋美術館)』(1547年頃)
  • 『マグダラのマリアの回心』(1545年–1548年頃)
  • 『博士たちの間のキリスト』(1548年頃)
  • 『受胎告知(ウフィツィ美術館)』(1551年-1556年頃)
  • 『パリサイ人シモンの家の晩餐』(1555年-1556年頃)
  • 『エマオの晩餐』(1559年–1560年頃)
  • 『カナの婚礼』(1563年頃)
  • 聖カタリナと洗礼者ヨハネのいる聖家族』(1562年-1565年頃)
  • 聖ゲオルギウスの殉教』(1566年)
  • 『シモンの家の晩餐』(1570年頃)
  • レヴィ家の饗宴』(1573年)
  • 『東方三博士の礼拝』(1573年)
  • 『聖カタリナの神秘の結婚(アカデミア美術館)』(1575年頃)
  • 『バテシバの水浴』(1575年頃)
  • 『受胎告知(アカデミア美術館)』(1578年)
  • 『受胎告知(ティッセン=ボルネミッサ美術館)』(1580年頃)
  • 『キリストの洗礼』(1580年頃)
  • 『モーセの発見』(1580年頃)
  • 『スザンナと長老たち(白の宮殿)』(1580年頃)
  • 『スザンナと長老たち(プラド美術館)』(1580年頃)
  • 『スザンナと長老たち(美術史美術館)』(1585年頃)
神話画・寓意画・歴史画
肖像画
関連項目