2003年J2第43節・最終節

2003年J2第43節・最終節(2003ねんジェイツーだいよんしゅうさんせつ・さいしゅうせつ)とは、2003年平成15年)11月15日に行われた日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)ディビジョン2 (J2) 第43節、並びに同年11月23日に行われたJリーグ ディビジョン2第44節(最終節)の試合のことを指す。本項では特に、第42節終了時点でJリーグ ディビジョン1 (J1) 昇格の可能性があったサンフレッチェ広島アルビレックス新潟川崎フロンターレの試合を本記事で記す。

なお、正式にJ1昇格には2位以内確定後に、Jリーグ理事会での承認が必要になるが、2013年シーズンまでJ1昇格にあたって理事会での承認が得られなかったケースが存在しないため、便宜上「J2での2位以内確定」をもって「J1昇格」と記すことにする。

第43節までの経緯

2003年のJ2は、前シーズンのJ1年間成績下位2チームの広島、コンサドーレ札幌を含む12チームによる4回戦総当たり(各チーム44試合・全44節)により行われた。

第1クール(第1節-第11節)では、開幕戦の引き分け後10連勝で独走した広島が一歩前に出た格好となったが、第2クール(第12節-第22節)以降はJ2の過密日程と他チームの徹底マークにあって勢いを落とし、2位以下との差が徐々に詰まっていく。第3クール(第23節-第33節)に入っても広島の失速傾向は収まらず、ホームで圧倒的な勝率を誇る前年3位の新潟が次第にその差を詰め、第24節で広島をとらえて首位を奪取する。

第4クール(第34節-第44節)開始時点では2位広島に勝ち点差6を付け、悲願の昇格が目前となった首位新潟だったが、上位争いの直接対決である第35節広島戦・第37節川崎戦にいずれも敗れて差を詰められ、第4クールに入って全勝の川崎を交えた三つどもえの展開となり、第39節終了時点で昇格争いは首位新潟、2位川崎、3位広島の、勝ち点差2の中にひしめく3チームに絞られた。

2003 Jリーグ ディビジョン2 順位表(第39節終了時・抜粋)[1]
順位 チーム 勝点 試合 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
1 アルビレックス新潟 78 39 24 6 9 70 34 +36
2 川崎フロンターレ 77 39 22 11 6 79 40 +39
3 サンフレッチェ広島 76 39 22 10 7 57 31 +26
4 ヴァンフォーレ甲府 61 39 17 10 12 52 41 +11 3位以下確定

その後、新潟と広島が1勝1分け、川崎が1敗1分けで迎えた2003年11月9日の第42節、勝てば広島・川崎の動向次第で昇格が確定する新潟はホームで横浜FCに快勝[2]。川崎はアビスパ福岡に前半ロスタイムに先制されるも、後半一挙5得点を奪いホームで逆転勝ちして一縷の望みをつなぐ[3]。一方、モンテディオ山形とアウェーで対戦した広島は、先制するも後半ロスタイムに山形のロングスローからFW中村幸聖に同点ゴールを決められ、勝ち点3を逃して新潟との差を離されたかに思えた。しかしその直後、今度は広島のロングスローからのこぼれ球をFW松浦宏治が流し込んで、再度勝ち越し。広島が辛くも勝ち点3をもぎ取った[4]。これにより、昇格チームが1チームも確定しないまま、残り2節を迎えることとなった。

2003 Jリーグ ディビジョン2 順位表(第42節終了時・抜粋)[5]
順位 チーム 勝点 試合 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差
1 アルビレックス新潟 85 42 26 7 9 78 38 +40
2 サンフレッチェ広島 83 42 24 11 7 62 32 +30
3 川崎フロンターレ 81 42 23 12 7 84 44 +40

第43節

第43節 概要

迎えた第43節、3チームは次の対戦を迎えることになった。

※開始予定時刻はすべて15:00。左側がホームチーム。太字はJ1昇格の可能性があるチーム。

この節では新潟と広島にJ1昇格決定の可能性があり、場合によっては新潟・広島の昇格が共に決まる可能性があった。さらに新潟はJ2優勝が決まる可能性もあった。この節での昇格・優勝決定条件は以下の通り[注 1][6]

  • 新潟:勝てば広島・川崎の勝敗に関係なく昇格決定。その上で広島が引き分け以下の場合は優勝も決定。引き分けの場合は広島・川崎が両方とも勝たなければ昇格決定。敗れた場合は広島・川崎のどちらかが敗れるか、両方とも引き分けた場合に昇格決定。なお引き分け以下の場合は今節での優勝決定はないが、新潟引き分け・広島敗戦・川崎引き分け以下の場合は優勝が決定的となる[注 2]
  • 広島:勝利の上で、川崎が引き分け以下の場合昇格決定。

第43節 前半

15:04に福岡と平塚で、1分遅れて広島でキックオフ。

最初に試合が動いたのはビッグアーチだった。6分、広島FW中山元気がヘディングで落としたボールをFWマルセロが決めて広島が先制する[7]

福岡 0 – 0 新潟
広島 1 – 0 鳥栖
湘南 0 – 0 川崎
第43節10分時点での仮想順位
順位 チーム 勝点 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
- 1 アルビレックス新潟 86 26 7 9 78 38 +40 J1昇格
- 2 サンフレッチェ広島 86 25 11 7 63 32 +31 J1昇格
- 3 川崎フロンターレ 81 23 12 7 84 44 +40

次に試合が動いたのは平塚。開始早々は湘南に押し込まれる場面もあった川崎だが、徐々に支配率を高め、26分に川崎MF長橋康弘の30mドリブル突破からFWジュニーニョにスルーパス。これをジュニーニョが決めて川崎が先制する[8]。この時点で終われば、3強の昇格争いは最終節にもつれ込むことになる(ただし、得失点差の関係で新潟が有利な状況ではあった)。

福岡 0 – 0 新潟
広島 1 – 0 鳥栖
湘南 0 – 1 川崎
第43節30分時点での仮想順位
順位 チーム 勝点 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
- 1 アルビレックス新潟 86 26 7 9 78 38 +40
- 2 サンフレッチェ広島 86 25 11 7 63 32 +31
- 3 川崎フロンターレ 84 24 12 7 85 44 +41

先制後守りを固めた広島だったが、必要以上にゾーンを下げたためか鳥栖に押し込まれる場面を作られ、35分に、鳥栖のセットプレーからFW鳴尾直軌に同点ゴールを決められ、試合は振り出しに戻る[7]。これにより、新潟昇格決定の可能性が再浮上した。

福岡 0 – 0 新潟
広島 1 – 1 鳥栖
湘南 0 – 1 川崎
第43節35分時点での仮想順位
順位 チーム 勝点 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
- 1 アルビレックス新潟 86 26 7 9 78 38 +40 J1昇格
2 川崎フロンターレ 84 24 12 7 85 44 +41
3 サンフレッチェ広島 84 24 12 7 63 33 +31

一方、博多の森では、中盤を支配し左サイドのMF古賀誠史とDFアレックスの連携で新潟の右サイドを攻略する福岡と、前線に残ったFW上野優作を軸に少ないパスでチャンスを繰り出す新潟による一進一退の攻防が続いていたが、39分、右サイドに開いた福岡FW福嶋洋がFWベンチーニョに送ったパスが新潟の守備陣形を崩し、ベンチーニョがゴールをきめて福岡が先制する[9]。この時点で新潟の昇格確定の可能性が一旦消滅した。

福岡 1 – 0 新潟
広島 1 – 1 鳥栖
湘南 0 – 1 川崎
第43節40分時点での仮想順位
順位 チーム 勝点 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
- 1 アルビレックス新潟 85 26 7 10 78 39 +39
- 2 川崎フロンターレ 84 24 12 7 85 44 +41
- 3 サンフレッチェ広島 84 24 12 7 63 33 +30

このまま前半を終了すると思われたが、ビッグアーチで前半終了間際の43分にマルセロが受けたファールからフリーキックを獲得。これをMF森崎浩司が直接決めて広島が再び勝ち越し[7]。このまま、各スタジアムとも前半を終了する。

福岡 1 – 0 新潟
広島 2 – 1 鳥栖
湘南 0 – 1 川崎
第43節前半終了時点での仮想順位
順位 チーム 勝点 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
1 サンフレッチェ広島 86 25 11 7 64 33 +31
2 アルビレックス新潟 85 26 7 10 78 39 +39
3 川崎フロンターレ 84 24 12 7 85 44 +41

第43節 後半

46分、平塚では湘南MF坂本紘司のクロスボールにFW石原直樹があわせてシュート。これを川崎GK吉原慎也が弾いて防ぐも、これが川崎MFアウグストの背中に当たってそのまま湘南ゴールに吸い込まれるという不運[8]。痛恨のオウンゴールで湘南に追いつかれ、広島に昇格決定の可能性が再浮上する。

福岡 1 – 0 新潟
広島 2 – 1 鳥栖
湘南 1 – 1 川崎
第43節55分時点での仮想順位
順位 チーム 勝点 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
- 1 サンフレッチェ広島 86 25 11 7 64 33 +31 J1昇格
- 2 アルビレックス新潟 85 26 7 10 78 39 +39
- 3 川崎フロンターレ 82 23 13 7 85 45 +40

勝って最終節の広島戦に挑みたい川崎はここから猛攻を仕掛け、68分にはペナルティエリアの少し手前で受けたFKを川崎MFアウグストが直接蹴り込み、川崎が再び勝ち越しに成功[8]。再度最終節に持ち込まれるシチュエーションとなる。

福岡 1 – 0 新潟
広島 2 – 1 鳥栖
湘南 1 – 2 川崎

しかしその直後の69分、今度は博多の森で試合が動く。新潟DF安英学からポストの位置で受けたFW上野がボールを左のスペースへ送ると、そこに走りこんだFWファビーニョがボレーを叩き込んで、新潟が同点に追いつく[9]

福岡 1 – 1 新潟
広島 2 – 1 鳥栖
湘南 1 – 2 川崎
第43節70分時点での仮想順位
順位 チーム 勝点 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
- 1 アルビレックス新潟 86 26 8 9 79 39 +40
- 2 サンフレッチェ広島 86 25 11 7 64 33 +31
- 3 川崎フロンターレ 84 24 12 7 86 45 +41

77分、平塚では湘南MF坂本紘司のあげたクロスがそのままゴールに吸い込まれ、湘南が再び同点に追いつく[8]。これにより川崎は絶体絶命のピンチに追い込まれた。

福岡 1 – 1 新潟
広島 2 – 1 鳥栖
湘南 2 – 2 川崎
第43節80分時点での仮想順位
順位 チーム 勝点 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
- 1 アルビレックス新潟 86 26 8 9 79 39 +40 J1昇格
- 2 サンフレッチェ広島 86 25 11 7 64 33 +31 J1昇格
- 3 川崎フロンターレ 82 23 13 7 86 46 +40

このまま終わって広島と新潟の同時昇格決定かと思われた終了間際、博多の森で劇的な展開が起こる。この試合、13,000人を超える観衆を集めた博多の森では対新潟3連敗中の福岡が意地を見せ、86分に新潟ゴール前で福岡FWベンチーニョとDFアレックスが強引にボールを前に運ぼうとしたところ、ペナルティエリアの外側に居た福岡DF古賀のところにボールがこぼれ、古賀はここからミドルシュート。これが決まって福岡が土壇場で勝ち越しに成功[9]。新潟の反町康治監督をして「フットボールというゲームの怖さを感じた試合」と表現した一戦は福岡の勝利で試合終了。ビッグアーチと平塚のゲームもこのまま終了し、新潟が敗戦、広島が勝利、川崎は引き分けという結果に終わった。

福岡 2 – 1 新潟(試合終了)
広島 2 – 1 鳥栖(試合終了)
湘南 2 – 2 川崎(試合終了)
2003 Jリーグ ディビジョン2 順位表(第43節終了時・抜粋)[10]
順位 チーム 勝点 試合 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
1 サンフレッチェ広島 86 43 25 11 7 64 33 +31 J1昇格
2 アルビレックス新潟 85 43 26 7 10 79 40 +39
3 川崎フロンターレ 82 43 23 13 7 86 46 +40

この結果、小野剛監督の公約でもあった広島が1年でのJ1復帰を果たす。また新潟が敗戦したため、わずかながら川崎にも昇格の可能性が残ったが、川崎にとっては痛すぎる引き分けとなった[11]

一方、広島に敗れた鳥栖は第17節から27試合連続無勝利となり、2000年にヴァンフォーレ甲府が記録した26試合連続無勝利を更新するJリーグワースト記録となってしまった[注 3]

第43節 試合データ

2003 Jリーグ ディビジョン2 第43節第1日
サンフレッチェ広島 v サガン鳥栖
サンフレッチェ広島 2 - 1 サガン鳥栖
マルセロ 6分にゴール 6分
森崎浩司 44分にゴール 44分
公式データ 鳴尾直軌 35分にゴール 35分
広島ビッグアーチ
観客数: 22,052人
主審: 砂川恵一
ベンチ入り選手(広島 - 鳥栖)
サンフレッチェ広島
GK 01 下田崇
DF 37 井川祐輔 84分に交代退場 84分
DF 02 リカルド
DF 19 上村健一
MF 07 森崎浩司 71分に交代退場 71分
MF 08 森崎和幸
MF 20 大木勉 88分に交代退場 88分
MF 06 サンパイオ
MF 17 服部公太
FW 27 中山元気
FW 10 マルセロ
サブメンバー
GK 21 林卓人
DF 18 八田康介 71分に交代出場 71分
MF 03 沢田謙太郎 84分に交代出場 84分
FW 09 高橋泰 88分に交代出場 88分
FW 36 眞中靖夫
監督
小野剛
サガン鳥栖
GK 21 藤川康司
DF 24 井手口純
DF 05 宮川悟 25分に警告 25分
DF 03 三好拓児 80分に交代退場 80分
MF 25 村主博正 66分に交代退場 66分
MF 27 佐藤陽彦
MF 17 山道高平 73分に警告 73分
MF 13 古川隆志
MF 22 米山大輔
FW 18 大友慧 80分に交代退場 80分
FW 20 鳴尾直軌
サブメンバー
GK 14 シュナイダー潤之介
DF 02 朝比奈伸 80分に交代出場 80分
DF 15 中村祥朗
MF 26 矢部次郎 73分に交代出場 73分
FW 08 小石龍臣 80分に交代出場 80分
監督
千疋美徳

2003 Jリーグ ディビジョン2 第43節第1日
湘南ベルマーレ v 川崎フロンターレ
湘南ベルマーレ 2 - 2 川崎フロンターレ
68分にゴール 68分 (o.g.)
坂本紘司 77分にゴール 77分
公式データ ジュニーニョ 26分にゴール 26分
アウグスト 68分にゴール 68分
平塚競技場
観客数: 7,092人
主審: 北村央春
ベンチ入り選手(湘南 - 川崎)
湘南ベルマーレ
GK 16 小林弘記
DF 17 北出勉
DF 15 パラシオス 9分に警告 9分
DF 05 白井博幸 65分に警告 65分
MF 02 梅山修 33分に交代退場 33分
MF 10 吉野智行 84分に交代退場 84分
MF 06 中里宏司 61分に警告 61分
MF 11 坂本紘司
MF 08 熊林親吾
FW 29 金根哲 41分に交代退場 41分 15分に警告 15分
FW 19 石原直樹
サブメンバー
GK 01 鈴木正人
DF 03 井原康秀 84分に交代出場 84分
MF 18 加藤大志
FW 14 石田祐樹 33分に交代出場 33分
FW 13 戸田賢良 41分に交代出場 41分
監督
山田松市
川崎フロンターレ
GK 17 吉原慎也
DF 02 伊藤宏樹
DF 13 寺田周平 86分に交代退場 86分
DF 05 箕輪義信
MF 23 鬼木達 76分に警告 76分
MF 14 茂原岳人
MF 29 長橋康弘 79分に交代退場 79分
MF 04 アウグスト
MF 18 今野章 74分に交代退場 74分
FW 10 ジュニーニョ
FW 27 我那覇和樹
サブメンバー
GK 01 浦上壮史
DF 32 岡山一成 74分に交代出場 74分
MF 06 山根巌
MF 26 中村憲剛 86分に交代出場 86分
FW 09 ホベルチ 79分に交代出場 79分
監督
石崎信弘

2003 Jリーグ ディビジョン2 第43節第1日
アビスパ福岡 v アルビレックス新潟
アビスパ福岡 2 - 1 アルビレックス新潟
ベンチーニョ 39分にゴール 39分
古賀誠史 86分にゴール 86分
公式データ ファビーニョ 69分にゴール 69分
ベンチ入り選手(福岡 - 新潟)
アビスパ福岡
GK 16 水谷雄一 89分に警告 89分
DF 32 平島崇 89分に交代退場 89分
DF 04 川島眞也
DF 05 千代反田充
DF 09 アレックス 70分に警告 70分
MF 07 宮崎光平
MF 20 米田兼一郎 76分に警告 76分
MF 08 原田武男 71分に交代退場 71分
MF 14 古賀誠史
FW 13 ベンチーニョ
FW 29 福嶋洋 75分に交代退場 75分
サブメンバー
GK 01 大神友明
DF 26 増川隆洋 89分に交代出場 89分
MF 06 篠田善之 71分に交代出場 71分
MF 10 宮原裕司
FW 24 太田恵介 75分に交代出場 75分 83分に警告 83分
監督
松田浩
アルビレックス新潟
GK 21 野澤洋輔
DF 17 安英学
DF 03 アンデルソン
DF 02 丸山良明
MF 14 高橋直樹 89分に交代退場 89分
MF 08 山口素弘
MF 06 秋葉忠宏
MF 12 宮沢克行 68分に交代退場 68分
MF 09 ファビーニョ
FW 10 マルクス
FW 11 上野優作
サブメンバー
GK 01 木寺浩一
DF 26 尾崎瑛一郎
MF 23 深澤仁博 68分に交代出場 68分
FW 32 山形辰徳
FW 24 森田浩史 89分に交代出場 89分
監督
反町康治

最終節

最終節 概要

迎えた11月23日の最終節の組み合わせは以下の通り。最終節に上位争いの直接対決が組まれるという組み合わせの妙となった。

※開始予定時刻はすべて13:00。左側がホームチーム。太字はJ1昇格決定または可能性のあるチーム。

前節で広島のJ1昇格が決定し、残る1枠を新潟と川崎で争う構図であったが、川崎勝利・新潟敗戦の場合のみ川崎昇格、それ以外は新潟が昇格するという状況であった。また 優勝争いは広島と新潟に絞られていたが、優勝の条件は以下の通りである[6]

  • 広島:勝てば新潟の結果に関係なく優勝決定。引き分けの場合は新潟が引き分け以下、敗れた場合は新潟も敗れれば優勝。
  • 新潟:勝利の場合は広島が引き分け以下の場合優勝、引き分けの場合は広島が敗れれば優勝。

新潟にとっては引き分け以上で昇格は決定、広島の結果如何では優勝も決まるが、敗れれば昇格を逃す可能性もあった。新潟の相手はここまで3連勝中の大宮で、しかもここまで15勝4分2敗と圧倒的勝率を誇るホーム・ビッグスワンでの試合であり[6]、状況的には新潟が圧倒的に優位であるが、川崎もここまで広島に負けなし(1勝2分け)であり[6]、予断を許さない状況でもあった。

注目度の高さは、NHKがJ2では通常行っていなかった衛星放送(BS1)での中継(録画中継)を行うほどであった。

最終節 前半

13:04に等々力で、1分後の13:05にビッグスワンでキックオフ。

ビッグスワンでは、ホームの4万人超の大声援を受けた新潟が序盤から攻勢に出る。10分、J2得点王となった新潟FWマルクスのフリーキックが大宮DFに弾かれ、ペナルティエリア内で混戦となった後、新潟FW上野優作が大宮GK安藤智安のタイミングを外すシュート。これがゴールに吸い込まれ、新潟が先制する[12]

新潟 1 – 0 大宮
川崎 0 – 0 広島
最終節15分時点での仮想順位
順位 チーム 勝点 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
1 アルビレックス新潟 88 27 7 9 80 40 +40 J1昇格
2 サンフレッチェ広島 87 25 12 7 64 33 +31 J1昇格
- 3 川崎フロンターレ 83 23 14 7 86 46 +40

一方、等々力では、攻める川崎に対して広島が自陣ゴール前でブロックをつくって守り、そこからカウンターを狙うという展開が続いたが、23分、川崎がやや遠目の位置で得たフリーキックのチャンスをDFアウグストが直接決めて逆転昇格へ望みをつなぎたい川崎が先制点を挙げる[13]

新潟 1 – 0 大宮
川崎 1 – 0 広島
最終節25分時点での仮想順位
順位 チーム 勝点 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
- 1 アルビレックス新潟 88 27 7 9 80 40 +40 J1昇格
- 2 サンフレッチェ広島 86 25 11 8 64 34 +30 J1昇格
- 3 川崎フロンターレ 85 24 13 7 87 46 +41

さらに2点目を狙う川崎だったが、35分、逆に広島がMF服部公太の突破からMFサンパイオとのコンビネーションでPKを獲得。これをFWマルセロが決めて広島が同点に追いつく[14]。同点に追いつかれた川崎は再び猛攻を仕掛けるも得点に至らず、前半は同点のまま終了した。

一方、ビッグスワンでは新潟先制の後は互角のボール支配率となり、新潟DF高橋直樹のフリーキックや大宮FWバレーのシュートがいずれもゴール脇をかすめるなど、両者とも何度か決定機を迎えるも得点には至らず、新潟1点リードのまま前半を終了する[12]

新潟 1 – 0 大宮
川崎 1 – 1 広島

新潟が1点リードで折り返したのに対し、川崎は同点で折り返した為、川崎は後半で勝ち越すことと、新潟が2点取られることが必須となり、川崎はやや苦しい展開で後半を迎えることとなった。

最終節前半終了時点での仮想順位
順位 チーム 勝点 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
- 1 アルビレックス新潟 88 27 7 9 80 40 +40 J1昇格
- 2 サンフレッチェ広島 87 25 12 7 65 34 +31 J1昇格
- 3 川崎フロンターレ 83 23 14 7 87 47 +40

最終節 後半

後半に入り、ビッグスワンでは大宮が猛反撃に出る。大宮は左サイドのDF村田達哉のオーバーラップからのクロスボールなどで何度も新潟ゴール前に迫るが、自陣深い位置での守りに切り替えた新潟が得点を許さない[12]。一方、等々力でも川崎の猛攻を広島が自陣深い位置でのブロックで跳ね返し続けるという構図が続き[14]、共に膠着状態が続く。

なかなか攻めに転じることが出来ない広島は、小野剛監督がMF大木勉に替えてFW高橋泰を投入し、システム4-3-3に変えて、より攻撃的な布陣に切り替えようとした[14]

しかしその直前の81分、広島からボールを奪った川崎がカウンターに転じ、FWジュニーニョとFWホベルチとのワンツーで突破し[14]、ジュニーニョのパスを受けたFW我那覇和樹がペナルティエリア右隅からシュート[13]。これが決まって川崎が勝ち越しに成功する。

新潟 1 – 0 大宮
川崎 2 – 1 広島

直後にシステムを変更した広島だったが時既に遅く、「1点を守りきる」意識が統一された川崎の前にゴールを割ることが出来ず、このまま試合終了[14]。広島は開幕戦でロスタイムに失点して川崎と引き分け(第1クールで唯一の未勝利)、第10節ではシーズン初黒星を喫するなど、節目節目で川崎に勝てず、このシーズン川崎に未勝利(2分け2敗)に終わり、J2優勝を逃した[14]

一方、ビッグスワンでは、62分にFW黒崎久志を、88分にFW磯山和司を投入し、前線を分厚くしてパワープレーを仕掛ける大宮の攻撃を、新潟が高い集中力で必死に食い止め、そのまま試合終了[12]。新潟が悲願のJ1昇格を果たし、J2優勝のタイトルも獲得した。

等々力では試合終了直後にビッグスワンの結果が伝えられ、ピッチ上では、試合を終えた川崎の選手たちがうつろな表情を浮かべ、ベンチも勝利に酔いしれることなく沈黙した[13]。結局川崎は勝ち点1差でJ1昇格を逃すことになったが、「勝ち点1差でのJ1(Jリーグ)昇格失敗」は、川崎にとっては1997年(当時旧・JFL)に続いて2度目、監督の石崎信弘にとっては大分トリニータ(当時J2)監督時代の1999年・2000年に続き3度目である。

新潟 1 – 0 大宮(試合終了)
川崎 2 – 1 広島(試合終了)
2003 Jリーグ ディビジョン2 順位表(全日程終了時・抜粋)[15]
順位 チーム 勝点 試合 勝利 引分 敗戦 得点 失点 得失点差 備考
1 アルビレックス新潟 88 44 27 7 10 80 40 +40 J1昇格
2 サンフレッチェ広島 86 44 25 11 8 65 35 +30 J1昇格
3 川崎フロンターレ 85 44 24 13 7 88 47 +41

最終節 試合データ

2003 Jリーグ ディビジョン2 第44節第1日
川崎フロンターレ v サンフレッチェ広島
2003年11月23日
13:04
川崎フロンターレ 2 - 1 サンフレッチェ広島
アウグスト 23分にゴール 23分
我那覇和樹 81分にゴール 81分
公式データ マルセロ 35分にゴール 35分
等々力陸上競技場
観客数: 22,087人
主審: 上川徹
ベンチ入り選手(川崎 - 広島)
川崎フロンターレ
GK 17 吉原慎也
DF 05 箕輪義信 86分に警告 86分
DF 13 寺田周平
DF 02 伊藤宏樹 28分に警告 28分
MF 06 山根巌
MF 14 茂原岳人
MF 04 アウグスト 35分に警告 35分
MF 20 長橋康弘 89分に交代退場 89分
MF 18 今野章 64分に交代退場 64分
FW 10 ジュニーニョ
FW 27 我那覇和樹
サブメンバー
GK 01 浦上壮史
DF 32 岡山一成 87分に交代出場 87分
MF 07 鬼木達 89分に交代出場 89分
MF 26 中村憲剛
FW 09 ホベルチ 64分に交代出場 64分
監督
石崎信弘
サンフレッチェ広島
GK 01 下田崇
DF 37 井川祐輔
DF 02 リカルド
DF 19 上村健一
MF 07 森崎浩司
MF 08 森崎和幸
MF 20 大木勉 82分に交代退場 82分 68分に警告 68分
MF 06 サンパイオ
MF 17 服部公太
FW 27 中山元気 69分に交代退場 69分
FW 10 マルセロ
サブメンバー
GK 21 林卓人
DF 18 八田康介
MF 14 山形恭平
FW 09 高橋泰 82分に交代出場 82分
FW 36 眞中靖夫 69分に交代出場 69分
監督
小野剛

2003 Jリーグ ディビジョン2 第44節第1日
アルビレックス新潟 v 大宮アルディージャ
2003年11月23日
13:04
アルビレックス新潟 1 - 0 大宮アルディージャ
上野優作 10分にゴール 10分 公式データ
新潟スタジアム
観客数: 42,223人
主審: 松村和彦
ベンチ入り選手(新潟 - 大宮)
アルビレックス新潟
GK 21 野澤洋輔
DF 14 高橋直樹
DF 03 アンデルソン
DF 02 丸山良明
DF 35 鈴木健太郎 89分に交代退場 89分
MF 08 山口素弘
MF 06 秋葉忠宏 89分に警告 89分
MF 07 栗原圭介 76分に交代退場 76分
MF 09 ファビーニョ
FW 10 マルクス 82分に交代退場 82分
FW 11 上野優作 71分に警告 71分
サブメンバー
GK 01 木寺浩一
DF 04 杉山弘一
DF 17 安英学 89分に交代出場 89分
MF 23 深澤仁博 76分に交代出場 76分
FW 28 船越優蔵 82分に交代出場 82分
監督
反町康治
大宮アルディージャ
GK 01 安藤智安
DF 15 斉藤雅人
DF 04 トニーニョ
DF 02 奥野誠一郎
DF 33 村田達哉
MF 07 氏家英行
MF 14 大塚真司
MF 23 金澤慎 62分に交代退場 62分
MF 19 伊藤彰 88分に交代退場 88分
FW 12 盛田剛平
FW 11 バレー
サブメンバー
GK 20 荒谷弘樹
DF 18 松本大樹
DF 16 竹村栄哉
MF 30 磯山和司 88分に交代出場 88分
FW 10 黒崎久志 62分に交代出場 62分
監督
清雲栄純

エピソード

  • 最終節のビッグスワンに集まった観衆は公式記録42,223人。これは当時、J2における最多入場者数記録となっており[16]、2023年7月16日に行われた清水vs千葉国立)で47,628人の入場者数を記録するまでJ2最多観客動員記録であった[17]。また、この年の新潟の平均入場者数は30,339人で、J2としては歴代最多となっている。
  • 試合後、川崎監督の石崎信弘は昇格を逸した責任を取って契約満了をもって退任することが発表された[18]。しかし12月7日に等々力で行われた第83回天皇杯2回戦・国見高校戦では試合終了後、最後となるホームグラウンドで「お別れの挨拶」をサポーターの前ですると、グラウンド内に進入したサポーターたちに、つづいて選手たちに胴上げされた[19]

脚注

注記

  1. ^ 最終節に広島と川崎が直接対決するため、新潟はこの節終了時点で広島と川崎のどちらかに勝ち点4以上の差を付けるか、広島・川崎の一方に勝ち点1以上、もう一方に勝ち点2以上の差を付ければ、昇格決定であった。
  2. ^ この場合、新潟と広島は勝ち点差3なので広島の優勝可能性は残るが、新潟は得失点差で最低でも11上回り、最終節で得失点差が逆転される可能性が極めて低いため。
  3. ^ 鳥栖は最終節も引き分けで、28試合連続無勝利のままシーズン終了。2004年の第3節で勝利するまで2シーズンに渡り30試合連続無勝利となった。なお2016年シーズン終了時点での連続無勝利のワースト記録は、2010年から2011年にかけてギラヴァンツ北九州が記録した35(1シーズン内では2010年の33)である。

出典

  1. ^ “2003 Jリーグ ディビジョン2 順位表 【第39節】”. 2014年3月16日閲覧。
  2. ^ “【J2 42節 新潟vs横浜FC戦レポート】新潟完勝するも、昇格は次節以降に持ち越し”. J's GOAL (2003年11月9日). 2014年3月16日閲覧。
  3. ^ “【J2第42節 川崎Fvs福岡レポート】昇格への自覚と自信。川崎Fを支えたもの。”. J's GOAL (2003年11月9日). 2014年3月16日閲覧。
  4. ^ “【J2第42節 山形vs広島レポート】ロスタイムのドラマ”. J's GOAL (2003年11月9日). 2014年3月16日閲覧。
  5. ^ “2003 Jリーグ ディビジョン2 順位表 【第42節】”. 2014年3月16日閲覧。
  6. ^ a b c d 小野寺俊明 (2003年11月16日). “新潟初の昇格か?川崎の復帰か? J2 広島昇格決定!残りは1”. All About. 2014年3月16日閲覧。
  7. ^ a b c “【J2 第43節 広島-鳥栖戦レポート】広島、J1復帰。”. J's GOAL (2003年11月15日). 2014年3月16日閲覧。
  8. ^ a b c d “【J2 第43節 湘南vs川崎F戦レポート】湘南にまさかのドロー。最終節に全てを賭ける川崎”. J's GOAL (2003年11月16日). 2014年3月16日閲覧。
  9. ^ a b c “【J2 第43節 福岡vs新潟戦レポート】最後の90分に向けて”. J's GOAL (2003年11月16日). 2014年3月16日閲覧。
  10. ^ “2003 Jリーグ ディビジョン2 順位表 【第43節】”. 2014年3月16日閲覧。
  11. ^ “【4th MEDIA連動企画:J2歴代十番勝負 2003年】最終節で完結した新潟の昇格ドラマ。川崎Fの猛追がそれを盛り上げる結果に。”. J's GOAL (2006年7月24日). 2014年3月17日閲覧。
  12. ^ a b c d “【J2 第44節新潟 vs 大宮戦レポート】ついにJ1昇格決定。J2優勝も決めた新潟”. J's GOAL (2003年11月24日). 2014年3月19日閲覧。
  13. ^ a b c “【J2 第44節川崎F vs 広島戦レポート】川崎、「勝ち点差1」の重み”. J's GOAL (2003年11月24日). 2014年3月19日閲覧。
  14. ^ a b c d e f “【J2 第44節川崎F vs 広島戦レポート】広島、「サッカーの怖さ」を川崎に教えられ続けた1年”. J's GOAL (2003年11月24日). 2014年3月19日閲覧。
  15. ^ “2003 Jリーグ ディビジョン2 順位表 【第44節】”. 2014年3月19日閲覧。
  16. ^ 『J2リーグ戦 最多入場者数記録更新!』(プレスリリース)日本プロサッカーリーグ、2003年11月23日。https://www.jleague.jp/release/article-00002362/2018年1月28日閲覧 
  17. ^ 『明治安田生命J2リーグ 最多入場者数記録更新 47,628人』(プレスリリース)日本プロサッカーリーグ、2023年7月16日。https://www.jleague.jp/release/明治安田生命j2リーグ%e3%80%80最多入場者数記録更新/2023年7月17日閲覧 
  18. ^ 『石崎信弘監督の契約について』(プレスリリース)川崎フロンターレ、2003年11月26日。http://www.frontale.co.jp/info/2003/1126_1.html2014年3月19日閲覧 
  19. ^ 上村智士郎 (2003年12月7日). “国見の挑戦を退けた、川崎のプライド(後編)(天皇杯2回戦 川崎フロンターレvs国見高校)”. スポーツナビ. Yahoo! JAPAN. 2014年3月19日閲覧。

関連項目

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